設立趣意書
今から約10年前。平成8年国民生活白書において、日本が長年作り上げてきた安全で安心で経済的に繁栄した今日の私たちの生活に陰りが訪れたと報告されました。
同じこの10年。私たちの生活の傍らで経済の繁栄に一役かっていたITの中から、現在でも一部でホームページと称されるウェブサイトが登場し、細々ながらも一産業として産声を上げました。安全で安心で経済的に繁栄した生活という神話の崩壊。かたや、テクノロジーの発達によってより豊かな生活を実現させようという願望。時代がもたらした2つのテーマを結びつけたのがこの10年という歳月であり、道具としてのウェブサイトであったのではないでしょうか。ウェブサイトの登場によって、私たちは暮らしにおける様々な情報にたどり着きやすいようになり、今後益々、新しい生活の道具として活発に使われる事になるでしょう。
しかし、僅か10年という短期間で急速に発展したウェブサイトを取り巻く環境は、あらゆる面で未整備な状態といえます。障害をもつ人や、情報家電を使い慣れていない高齢者の人々にとっては、まだまだ使いやすい状態になっているとはいえませんし、制作現場においても刻々と変化するITにおける技術情報や、インターネット特有の習慣やルールが広く知られる事も少なく、日本語を扱うが故に発生する日本独自の問題等にも頭を痛めています。産業としての規模も依然小さいままで、制作に関する技術習得のトレーニングの仕組みや職域も明確に定義されていませんし、また、人々の暮らしの安全に関わる情報や経済の繁栄に関わる情報発信をウェブサイトで行う所有者側の多くも、ウェブサイトを取り巻く急速な変化に追いつけていないのが現状です。
平成16年より、日本ウェブ協会の前身であるアックゼロヨンにおいて、より多くの人にとってウェブサイトが使いやすくなるよう制作現場に向け、アワ-ドを通じてアクセシビリティとクリエイティビティの重要性を訴求して来ましたが、暮らしの安全に関わる情報は、もっと早く多くの人にたどり着くようにする必要があると考えます。同時に、時代を担う産業として制作現場には多くの人材が必要であり、所有者もコストの削減を実現、あるいは企業の場合には企業利益をも大きく左右するとして、ウェブサイトの活用が命題として位置づけられています。
ウェブサイトは、私たちの生活における安全や安心や経済の繁栄に直接働きかけることはしませんが、人々が情報にたどり着きやすくなることによって、豊かさに近づける道具となり得ます。その為には、新しい産業としての可能性や役割を認識し、関わる人々の手によって、整備から標準の構築、学会からウェブ工学の確立までを見据えて将来的に取り組む必要があると考えます。
日本ウェブ協会は、制作者だけでなく所有者や利用者等、様々な法人や個人が集まって議論や研究を行う事が重要と捉え、情報を共有しながら解決に向けて取り組む場を設けます。また、集まった情報やウェブサイトに関わる技術情報は学術的に蓄積し、研究結果等もセミナーやシンポジウム、書籍等を通じて公開し、研究・教育・普及に努め、日本語のウェブサイトの質の向上に寄与し、多くの利用者の利便性が高まることを目的に活動して参ります。
2007年3月15日
日本ウェブ協会 設立発起人代表:森川眞行

